先生の思いを、物語にして届ける仕事
歯科メディ編集部の吉田です。今回は、いつも先生方にインタビューをする側の、編集長のインタビューをお届けします。
株式会社Denis techで歯科メディの編集長を務める四ノ宮蒼也は、新卒で経済産業省に入り、国の予算や税の仕組みに携わっていました。安定と呼ばれるその場所で四ノ宮が少しずつ強く感じていたのは、組織の大きさに支えられるのではなく、自分の力でどれだけ価値を届けられるかを大事にしたいという思いでした。
大学時代からの友人で、代表の田丸に誘われて手伝い始めた会社で、四ノ宮は未経験の仕事を一つずつ形にしてきました。その延長線上で、今は歯科メディを広げる個人の発信にも力を注いでいます。先生の思いを物語にして届け、患者さんの行動が変わるきっかけをつくりたい――なぜ自分が個人活動を続けるのか、その原点から伺いました。
Q1. 歯科業界に入る前は経済産業省で働かれていました。その道を選んだきっかけを教えてください。
きっかけは、やりたいことをまだ探している途中だったことにあります。学生の頃はいろんな業界を深く見てきたわけではなくて、自分が本当に何をしたいのか、はっきりとは見えていませんでした。経済産業省なら、中小企業やベンチャーの支援など、幅広い業界や企業と関わることができます。幅広い世界と関わる中で、やりたいことを見つけられるのではないかと思って選びました。
正直に言うと、もともとは空港で働く税関の仕事に興味を持っていました。ただ、たまたま参加した合同説明会で経済産業省の方に声をかけられ、話を聞きに訪ねてみたんです。その場の雰囲気が明るく、職員の方々もフレンドリーで、ここでなら幅広い仕事ができそうだと感じました。軽い気持ちで訪ねたその日のうちに、朝から晩まで面接が続き、気づけば経済産業省から内定をいただいていました。思い描いていた道とは違う入り口でしたが、さまざまな仕事に触れて、自分が本当にやりたいことを探したいという気持ちは、今も変わっていません。
Q2. 経済産業省で働く中で、印象に残っている経験や気づきを教えてください。
いちばん印象に残っているのは、国家公務員でなければできない経験をたくさんさせてもらえたことです。政治家の方や大企業の社長とお話しする機会があったり、新聞に載る前の政策が決まっていく裏側を、リアルタイムで見ることができたりしました。残業が月に百時間、二百時間に及ぶ中でも働き続ける先輩たちの姿には、こんなに底力のある人たちがいるのかと、何度も刺激を受けました。
一方で、自分の仕事は、国という大きな仕組みを動かす歯車の、ネジ一本のような感覚があって、達成感を持ちにくいところもありました。すごいと言われるのは組織が大きいからで、自分自身がすごいわけではありません。そう感じるほど、自分の力で価値を出せている実感が薄かったんです。一年目のある朝、何も知らずに取った電話で、上司が通勤中に倒れたと知らせを受けたことがありました。そのとき、将来の自分を重ねてしまって、このままでいいのだろうかと考えるようになりました。
Q3. Denis techに入社したきっかけを教えてください。
入社のいちばん大きなきっかけは、大学時代からの友人で、代表の田丸の存在です。大学の同じ学科で、たまたま隣の席に座ったことから話すようになった仲です。在学中、田丸は一人でアフリカに渡ってボランティアをしていて、その行動力にはずっと尊敬の気持ちがありました。現地の子どもたちと畑を耕し、働き口そのものを生み出そうとする姿は、魚を与えるのではなく釣り方を教えるような取り組みでした。
特に心に残っているのは、田丸が滞在していたボランティア先で、資金が尽きてしまったときのことです。田丸は、恥ずかしさも捨てて、SNSで力を貸してほしいと呼びかけていました。その姿を見て、本当の意味で熱意を持てる人なのだと感じたんです。ちょうど私が仕事のことで悩んでいた時期に、「手伝ってみない?」と声をかけてくれました。軽い気持ちで始めた手伝いが、今の場所につながっています。
Q4. 働き続ける中で、ご自身の仕事の仕方はどのように変わっていきましたか。
関わり始めた頃は、右も左もわからない状態で、一から学びながら手を動かしていました。そうして少しずつ、自分に合う仕事の仕方が少しずつ見えてきました。たとえばホームページの制作は、それまでまったくの未経験でした。それでも自分で調べながら一から作ってみると、少しずつ形になっていくんです。未経験のことでも、調べて手を動かせば自分にもできる。その手応えが、一つずつ積み上がっていきました。
もともと私は、インプットしたものをアウトプットして人の役に立つ、その循環に面白さを感じるほうです。ウェブマーケティングも経営のことも、Denis techでは実践の中で吸収していけます。組織に所属して安定を求めるよりも、自分のスキルや知識を生かして成長できる場所のほうが自分には合っていると感じています。安定という言葉よりも、自分の手で価値をつくれる実感のほうが、私には大切でした。それが、この会社で働き続けている理由です。
Q5. 今、担当されているお仕事と、個人での発信活動を始めた理由を教えてください。
今は大きく二つの仕事を担当しています。一つは、お客さまである歯科医院の未来を一緒に描き、その実現に伴走していく仕事です。もう一つが、弊社が運営している歯科メディというメディアを、さらに広げるための個人での発信活動です。この個人活動こそ、私がいま力を注いでいる取り組みです。
発信を始めた理由は、自分たちの中にあった矛盾に気づいたことにあります。私たちは先生方に、人柄を打ち出して、SNSで思いを伝えていきましょうとお伝えしています。それなのに、自分たちがそれを十分に体現できていないと感じました。人に勧めていることを自分がやっていなければ、説得力を持って伝えることはできません。だからこそ、まず自分が先頭に立って体現したいと考えたんです。先生にお願いしていることを、自分の言葉と行動で示したい。それが、個人で発信を続ける出発点になりました。
Q6. 日々の活動の中で、やりがいを感じるのはどんな場面ですか。
やりがいを感じるのは、自分が試したことがうまくいったときや、お客さまに満足していただけたときです。歯科メディでは、これまで百人以上の先生にインタビューをしてきました。その経験を生かして、noteやSNSで、先生の言いたいことをくみ取り、患者さんにわかりやすく届ける記事を書いています。その記事について、先生から「言いたかったことをうまくまとめてくれた」と言っていただける瞬間は、とても嬉しく感じます。
Q7. これから実現していきたいことを教えてください。
これから実現したいのは、弊社が運営する歯科メディを、もっと広げていくことです。百人以上の先生にお話を伺う中で、強くなった実感があります。多くの先生が、患者さんに治療を提供するという前の段階から、そもそも悪くならないでほしいと願っています。その予防への思いを、もっと広く届けたいんです。
たとえば歯科医院のホームページには、設備や資格のことは載っていても、その奥にある先生の思いまでは、なかなか伝わりません。よくお話を伺うと、患者さんのためにという一つひとつの思いが、その医院のかたちをつくっていることに気づきます。その思いを物語にして届けることで、患者さんが「知っている」から「行動する」へと一歩を踏み出すきっかけになればと考えています。一人ひとりの先生の思いを物語にして、患者さんの健康と、その先の健康寿命につなげていく。それが、私が望む未来です。








