先生の想いを、患者さんに届ける仕事
歯科メディ編集長の四ノ宮です。Denis techでは、私たちメンバーがどんな想いで仕事に向き合っているのかをお伝えするため、社員インタビューを始めることにしました。先生方に「人柄を伝えましょう」とお話ししている私たち自身も、まずは自分たちの人柄をお伝えしたいと考えています。最初は、代表のインタビューをお届けします。
歯科医院のホームページやインスタグラムを通じて、患者さんと医院をつなぐ仕事をしている、株式会社Denis tech代表の田丸誠人。前職で医療機関のマーケティングに携わるなかで、広告で集患しても現場が報われない、という場面を数多く見てきたといいます。そこから田丸がたどり着いたのが、先生の人柄や想いそのものを患者さんに届ける「人柄マーケティング」という考え方です。
その原点には、学生時代に単身でアフリカへ渡り、「自分に力がなければ、目の前の人すら救えない」と突きつけられた経験があります。スペックや価格で選ばれる時代から、先生への共感で選ばれる時代へ。なぜ「人柄マーケティング」なのか。これまでの道のりを伺いました。
Q1. 学生時代にアフリカへ行かれたのは、どういう理由だったのですか。
きっかけは、英語を本気で身につけたいという思いでした。学校に通うだけでは喋れるようにならないと考えていて、それなら、喋れないと生活できない環境に身を置くしかないと思ったんです。費用も航空券くらいで済む場所を探していくうちに、日本人がほとんどいないアフリカにたどり着きました。先にインドネシアへ行ってみて、海外は飛行機に乗れば案外行けるものだと感じていたことも、後押しになっています。
ただ、現地で目にしたのは、想像とはまったく違う現実でした。働く場所がほとんどなく、世界中から莫大な寄付が入っているのに、それがまるで活かされていないんです。到着して間もない頃、ゴミ溜めのような場所で暮らす子どもたちのところへ連れて行かれたことがありました。話を聞こうとした私は、鼻で笑われてしまって。あのときの空間の様子と匂いが、今でも忘れられません。
Q2. 現地では、どのような活動をされていたのですか。
現地で出会った医師と一緒に、二つのことに取り組みました。ひとつは、空いている土地を借りて、種や肥料を渡し、現地の子どもたちに農業を教えることです。半年ほどで作物が穫れて、滞在していた家でその野菜を売ったりもしました。「恵んでもらう」のが当たり前になっていた子たちに、自分で働くという経験を渡したかったんです。もうひとつは、現地のソウルフードを出す小さな食堂をつくり、働く場所そのものを増やそうとしたことでした。うまくいかないことも多かったのですが。
その活動を、誰よりも積極的に手伝ってくれたのが、デニス(Denis)という少年でした。孤児院にいた、好奇心の強い子です。私たちの会社名(Denis tech)は、この子の名前からとっています。ただ、彼の人生を本当に良くしてあげられたかというと、そうではなかったという後悔が、今も私の中に残り続けています。連絡先も持っていない子だったので、今どうしているのかも分かりません。
このとき痛感したのは、お金やスキル、人とのつながりがなければ、目の前の人の人生すら変えられないということでした。当時、私は20歳。この感覚が、その後の私の原点になっています。
Q3. 日本に戻られてから、前職ではどのような仕事をされていましたか。
日本に戻ってからは、医療機関のマーケティングを支援する会社で働いていました。広告やSNSを使って、より多くの患者さんに来てもらう仕組みをつくる仕事です。ただ、広告費をかけて新規の患者さんが増えても、利益が思うように残らない。現場は忙しくなるばかりで、スタッフも疲れていく。そうした医院を、数えきれないほど見てきました。
当時の会社が出していた答えは、「SNSで発信していきましょう」「広告で集めていきましょう」というものでした。間違ってはいないのですが、それで本当に役に立てているのか。目の前の数字を追うほど、その問いがかえって自分の中に残っていったんです。
Q4. 独立を決められたのは、どういう思いからだったのですか。
独立のきっかけを正直にお話しすると、「これなら自分でもやれるのではないか」という感覚が出発点でした。立派な使命感から始まったというより、自分の手でやってみたいという気持ちが先にありました。
前職の頃から、商品そのものよりも、自分がお客さんとどう関わるかというところで価値を出してきた実感があったんです。サービス以外の相談を受けることも多くて、人と向き合って役に立つことに手応えを感じていました。だからこそ、組織の中で動いているだけでは、自分の裁量に限界があるとも感じていて。自分でサービスをつくるところから関われたら、もっと良いものを届けられるのではないか。その思いが、独立へと自分を動かしました。
Q5. 独立した当初は、どのような日々でしたか。
独立した当初は、正直なところ、ホームページを一つ形にすることだけで精一杯でした。作り方を一から調べながら、とにかく納品しきることに必死だった日々です。SEOで成果を出すというより、まず、目の前のものをきちんとつくり上げる。その段階に、2年、3年と向き合ってきました。
本当の意味で、商品として価値を届けられるようになったと感じられたのは、ここ最近のことです。遠回りに見えても、一つひとつの制作に本気で向き合ってきた時間があったからこそ、その先にあるものが見えてきたのだと感じています。
Q6. 考え方が大きく変わった転機があれば、教えてください。
大きかったのは、ある研修で学んだ考え方でした。それまでの私は、目標とする数字を立てて、その達成だけを目指すような生き方をしていたんです。ところが、ずっと目指していたものを手に入れても、思ったほど満たされない自分がいました。
そこで初めて、数字からではなく、自分が本当はどう在りたいのかという理念から考えるようになりました。自分一人が満たされることよりも、周りの人とともに豊かになっていくことのほうへ、心が向いていったんです。会社としてのミッションやビジョンについても同じで、「掲げたほうがいい」と知識では知っていても、腑に落ちてはいませんでした。その本質が、その先生自身の想いや原体験にあるのだと、ようやく実感できたのが、この時期だったと思います。
Q7. これからの歯科医院選びは、どう変わっていくとお考えですか。
ひとつ、はっきり感じていることがあります。SEOで上位に出るから患者さんが来る、という時代ではなくなってきた、ということです。今は患者さんもインターネットやAIで調べ方を知っていて、目が肥えています。検索結果でクリックされても、その先でしっかり比較して、選んでいるんです。
そうなると、最後に患者さんは何を見て選ぶのか。私は、その医院がどんな想いで診療しているか、そこに共感できるかどうかだと考えています。先生の考えが患者さんに伝わっているかどうかが、これからの軸になっていきます。技術や設備のスペックを並べるだけでは届かない部分に、目を向ける必要があると感じているんです。
Q8. 「人柄マーケティング」とは、どのような考え方なのでしょうか。
私たちが「人柄マーケティング」と呼んでいるのは、先生自身の人柄や想い、その原点にある体験を通して、医院の情報を伝えていくという考え方です。同じ「根管治療に力を入れています」という情報でも、なぜその先生がそこに力を入れているのか、という背景まで伝わると、患者さんの受け取り方はまるで変わります。情報を、先生の人柄というフィルターに通すことで、意味のある言葉に変わっていくんです。
たとえば、ある先生は、過去に神経を残してあげられず、患者さんに悲しい思いをさせてしまった経験から、その悲しみを減らしたい一心で技術を磨いてこられました。この原体験こそが、患者さんに伝わるべきものだと考えています。先生の想いを知らないまま治療を受けるのは、患者さんにとっても、もったいないことですから。先生の人柄を通じて、患者さんが納得して治療を選べる状態をつくる。それが、人柄マーケティングの目指すところです。
Q9. 仕事を通して、ご自身の中で気づいたことはありますか。
これは、自分自身の体験から痛感したことです。私は、定期的に歯科へ通ってメンテナンスを受けることの大切さを、情報としては知っていました。お恥ずかしい話ですが、それでも、実際に自分が通うようになったのは、ほんの最近のことでした。
何が私を動かしたかというと、先生と深く関わっていくなかで、一人ひとりの想いに直接触れ、歯の重要性を本当の意味で理解できたことでした。正しい情報をいくら浴びても動かなかった私が、人の想いに触れて、ようやく動いたんです。情報だけでは、人は動かない。この実感が、人柄マーケティングには意味があるという確信につながっています。
Q10. 先生方とは、どのように関わっていきたいとお考えですか。
先生がご自身ではうまく言葉にできずにいる想いを、一緒に掘り起こして言葉にしていく。そこに、私たちの役割があると感じています。先生の中にある原体験を、患者さんやスタッフに伝わるかたちに整えていくお手伝いです。
想いが伝わると、患者さんは納得して治療を選べますし、スタッフにも同じ想いが広がっていきます。共感してくれる方の採用にもつながり、医院全体のブランドになっていきます。だからこそ、契約の数を追うのではなく、一人ひとりの先生としっかり向き合い、成果でお返ししていきたいんです。私たちが目指すのは、患者さんが納得して治療を選べる社会を、先生とともにつくっていくことです。
Q11. これから目指していきたいことを教えてください。
会社をどれだけ大きくするか、ということを、一番には考えていません。それよりも、私の周りにいる家族や社員、関わってくださる先生方が、物心ともに豊かになっていくこと。そこをいちばん大切にしたいと考えています。
規模を大きくすること自体を目的にするのではなく、世の中に必要とされた結果として、自然に広がっていけばいい。一人ひとりが自分の仕事に自信を持ち、その人らしく輝ける組織にしていきたいんです。私自身は、次々と新しい事業を立ち上げるようなタイプではありません。周りの人と一緒に、一つひとつ形にしていく。そうやって、関わる人みんなが豊かになっていく未来を、つくっていきたいと考えています。








